溺愛ドクターは恋情を止められない
「ごめんなさい」
それしか言えなかった。
私の心の中にいるのは、高原先生ただひとりだから。
私の謝罪を聞いた小谷先生は、大きな溜息をついて天井を見上げる。
「今までの罰だな」
唇を噛みしめる彼は、「少し時間をくれないか」とつぶやいた。
「すぐに信用してくれなんて無理だよな。でも心を入れかえて、松浦にわかってもらえるように努力する。だから、フるのは待ってくれないか?」
「でも……」
小谷先生のことが信じられないから、というだけではない。
だけど、高原先生への思いを、ここで口にすることはできない。
酒井先生と付き合っているのなら、なおさらのこと。
「頼む」
視線を逸らさない彼は、少しも引く気配はない。
結局その日は、肯定も否定もできなかった。