溺愛ドクターは恋情を止められない
「どんなって……」
池下先生は、物静かで淡々と業務をこなす先生だった。
高原先生は……。
高原先生に、強く抱き寄せられたことを思いだし、途端に心臓が高鳴りだす。
さやかちゃんの死に動揺する私を慰めてくれた高原先生は、とても優しい人だった。
いや、それだけでなく……微かに震えていたあの手は、繊細な心の持ち主であることを物語っていた。
それから数人が着替えにやってきて、先生やナースの噂話が始まる。
いつもと変わらない日常に、少し安堵を覚えつつ、心はここにあらず……だった。
白いカットソーとボルドーのサーキュラースカートに着替え、黒と白のバイカラ―のカーディガンを羽織ると、ちょっとだけ仕事から気持ちが切り替わる。
だけど、那美と別れた私の足は、自然と地下へと向かっていた。