溺愛ドクターは恋情を止められない
ソーセージの意味
地下には霊安室がある。
まだ、さやかちゃんが眠っているはず……。
かといって、ドアを開ける勇気もなく、ただドア越しに深く一礼してその場を去った。
病院の裏口から外に出ると、空をオレンジ色に染めている夕日が沈みかけていた。
明日は天気がよさそうだ。
最寄の駅へと続く道を歩き始めたとき、駐車場の壁に寄りかかり、ぼんやりと空を見上げている人影が見えた。
沈む夕日に照らされて、柔らかそうな黒髪が、ほんのりオレンジ色に染まって見える。
「高原先生……」
高原先生は、白衣を脱ぐと別人に見えた。
黒いTシャツにカーキーのチノパン。
モッズコートを羽織っている彼は、一見にしてドクターには見えない。
「遅いぞ」
遅いって?
特に約束した覚えはないけど……。