溺愛ドクターは恋情を止められない
そして……頬に触れた先生の手の温もり。
『都』と呼ばれたときのドキドキ感。
誤って先生の胸に飛び込んでしまったときの……。
今でも鮮明に思い出せるのに、高原先生は一気に遠くに行ってしまったような気がして溜息が漏れる。
スマホを握りしめ、しばし画面を見つめる。
彼の声が聞きたい。
彼に、会いたい。
だけど、どうしても発信ボタンを押すことはできなかった。
あんなに大量の血を見た後だというのに、不思議と気持ちは落ち着いていた。
少し救急に慣れたというのもある。
だけど、あの時、隣で私を励まし続けてくれた高原先生がいたから、それほど動揺せずに済んだ気がした。
高原先生なら、患者を助けてくれると信じていたから。