溺愛ドクターは恋情を止められない
その日は、外科系の疾患での救急車が連続して入ってきた。
目が回るほど忙しいのに、小谷先生は落ち着いている。
そして、その診断は正確だった。
「師長、脳外の先生呼んでください」
血に染まるグローブ姿で師長に声をかけた後、私を見つけてさらに指示を出す。
「松浦。CT行くから、放科に連絡しといて」
いつもスタッフルームでは『松浦ちゃん』と呼ぶ彼も、診療中は別。
「はい」
そうやってなんとか切り抜けると、あっという間に交代の時間がやってきた。
「ふぅ」
多すぎる引き継ぎが終わり救急を出ると、待合室のベンチに座って溜息をついている小谷先生が目に入る。
「お疲れ様でした」
珍しく、顔が疲れている。
それくらいハードな勤務だった。