溺愛ドクターは恋情を止められない
だけど、高原先生の姿を見て、顔を伏せた。
つい数時間前の出来事を思い出して、少し恥ずかしくなったから。
あんなに泣いてしまうなんて。
でも、あの時、先生が泣かせてくれたから、その後の業務を続けられた。
お礼を言わなければ。
「あ、あの……」
「行くぞ」
「えっ?」
気がつくと、いつの間にか手首を掴まれている。
「えっ、なんですか? 行くって、どこに?」
軽くパニクっていると、クスクス笑っている。
「面白いな、お前」
高原先生の長い足についていくには、小走りにならなければならなかった。
彼はそのまま有無を言わせず、職員の駐車場まで私を連れていくと、一台のアウディを指さす。
「乗って」
突然の申し出に、呆然と先生の顔を見上げたけれど、冗談を言っているようには見えなかった。