溺愛ドクターは恋情を止められない
彼は気力も使い果たしたという感じで、白いソファにドサッと座り込む。
すぐにコーヒーを淹れ持っていくと、視線を宙に舞わせ、なにか考え事をしているような小谷先生の姿が目に入った。
「失礼します。コーヒーです」
コーヒーには砂糖とクリープを添えた。
「あはは。よくわかってる」
小谷先生はいつもブラックを飲むのに、砂糖とクリープのフルコース。
疲れた時には甘いもん、だから。
「患者さん助けていただいて、ありがとうございました」
心臓マッサージを始めたとき、もうダメかもしれないと震えた。
だけど、手術にはなっても、命は助かりそうだ。
「緊張するよ」
「えっ?」
コーヒーをひと口、口にした先生は予想外の言葉を口にした。
「自分の手に命が委ねられているって思うと、本当は震えるほど怖い」
あんなに堂々としているのに?