溺愛ドクターは恋情を止められない
「ナース同士でもこういうもめごとは時々あるみたい。居心地が悪くなって辞めた人もいるって噂だよ」
辞める?
私にそんな意志はない。
やっと仕事をひと通り覚えて、大変だけど、救急に係われることに誇りを持っているのに。
「女の嫉妬は怖いわよ。都、気をつけな」
「……うん。ありがと」
だけど、気をつけろと言われても、どうすればいいのかさっぱりわからない。
小谷先生に助けを求めるのも、おかしいし、逆効果になりそうだ。
モヤモヤした気持ちを胸にしまいこんで、その日は帰宅した。
部屋のローボードの上には、清春君がくれた絵。
額を買ってきて飾ると、とても小学生の描いた絵には見えなかった。
いつしか疲れて帰ってくると、手に取り眺めるのが習慣になっている。
心が穏やかになるからだ。