溺愛ドクターは恋情を止められない
「なに言ってんのよ。他人の男に手出しといて!」
頬に鈍い痛みが走った。
叩かれたのだ。
「誤解です」
「言い訳するの!?」
そのナースはさらに語気を強め、私に攻め寄る。
「救急車が入るんです。あとにしてください!」
どうしても引き下がれなかった。
先生達の全力の治療を知っているから。
「何事だ」
騒ぎを聞きつけて救急から出てきたのは、高原先生。
彼にこんなところを見られたくなかった。
でも……。
「松浦、脳梗塞の疑いが入るぞ。すぐにID用意して」
「はい」
彼は私の赤くなった左頬をチラッと見てから、そう言った。
「それからお前。ナースなら、なにが一番大事なのかわかるだろう。それと、松浦はそんないい加減なヤツじゃない」
「行くぞ」と私を促した先生の顔を思わず見上げる。
こんなに噂になっているのに、庇ってくれたの?