溺愛ドクターは恋情を止められない

「八十歳男性。倒れてからどれくらい経ったか今のところ不明だ。消防から確認でき次第連絡が入るから、その時はよろしく」

「はい」


高原先生は何事もなかったかのように、処置室に入って行った。
引継ぎもままならないまま、IDとカルテ作成に入った。

私を待っていたのが、小谷先生の元カノだと知っているナース達は、遠巻きに私の様子を見ていたけれど、黙々と働いた。

『そんないい加減なヤツじゃない』という高原先生の言葉が、うれしかったから、耐えられる。


小谷先生との交際の噂を否定できた訳ではない。

だけど少なくとも、私が軽い気持ちで誰かと付き合ったりしないと、高原先生はわかってくれている。
それだけで泣きそうにうれしかった。


脳梗塞の患者は、高原先生の必死の治療もあり、なんとか一命を取り留めた。

脳外科に患者を引き継ぐと、高原先生が受付に顔を出した。
加賀さんと中川さんは別の用で席を外していて、一瞬、ふたりの間に気まずい雰囲気が流れる。
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