溺愛ドクターは恋情を止められない
「お疲れ様でした」
たまらなくなってそう言うと、彼は近づいてきた。
「松浦」
「……はい」
ドクドクと暴れ出した心臓が、私を真っ赤に染めていく。
それは、彼があの時と――公園でのあの時と――同じように、私の頬に手を伸ばしたからだ。
「平気、か?」
「はい。すみませんでした」
離れていく大きな手。
感情が激しく揺れ動いて、どうにもコントロールできなくなる。
「松浦が謝ることじゃない」
そうかもしれないけど……。
「今日は救えたよ」
「はい」
それだけ言い残して、高原先生はスタッフルームに入って行った。
その日は、業務が終了すると、一番に救急を飛び出した。
私のことをチラチラと見ているナースの目が気になったから。
帰るときにすれちがった内藤さんは準夜勤で、今日の出来事を知らない。