溺愛ドクターは恋情を止められない
更衣室に急いで向かうと、「待って」という声が聞こえて、足を止めた。
その声は、小谷先生。
「松浦、ごめん」
先生は私の前に回り込むと、頭を下げる。
「アイツが、なにかしたみたいで……」
『アイツ』というのは元カノのナースのことだろう。
だけど、詳しくは知らないようだ。
「いえ、大丈夫です。失礼します」
小谷先生に頭を下げると、再び歩きはじめた。
今、ふたりでいるところを見られたら、もっと噂が広がってしまう。
小谷先生にはっきりと断るつもりだったけれど、病院内ではまずい。
「いや、待って」
それでも小谷先生は私の腕をつかんで引きとめた。
「ごめんなさい」
少し冷たい言い方になってしまった。
だけど、周りの目があるここでは、これ以上話せない。
彼の手を振り切って、その場から離れた。