溺愛ドクターは恋情を止められない
清春君がまだ小さな小指を出して、指切りをせがむ。
だけど、一瞬ためらった。
酒井先生が、足を止めたのが視界に入ったから。
「都ー。早く、早く」
「そうだね」
それでも、清春君をがっかりさせたくなくて、小指を絡ませ指切りをした。
「清春」
そこへお母さんが慌てた様子でやって来た。
「こんにちは」
「先日は、ありがとうございました。清春が都さんに会いたいと聞かなくて」
酒井先生は、受付の奥のスタッフルームに入って行ったようだ。
だけど、きっと声は聞こえている。
「私も会えてうれしいです。いただいた清春君の絵があまりに上手だったので、お礼を言いたかったんです」
「この子、入院が長かったので、絵ばかり描いていたんです。高原先生に一度褒められたら、ますますのめりこんじゃって」