溺愛ドクターは恋情を止められない
『高原先生』という言葉が出るたび、緊張で手に汗握る。
私と高原先生が、清春君と一緒に遊びに行ったなんて、彼女である酒井先生は気分がいいわけがない。
スタッフルームの方が気になったけれど、どうすることもできない。
「清春君。絵、大切にするね」
「うん!」
清春君は終始ハイテンションのまま、帰っていった。
それから受付に戻っても、スタッフルームに入ったままの酒井先生は出てこなかった。
ほどなく鳴った消防からのホットラインを取ろうとすると、いち早く出た人がいる。
ここでは受付以外にも、手が空いている人が電話に出る決まりになっている。
誰の手が空いているかわからないから。
電話を取ったのは酒井先生の様だ。
奥から声が聞こえてきた。
「わかりました。受けます。あと何分で着きますか?」
どうやら救急車が入るらしい。