溺愛ドクターは恋情を止められない
高原先生とは、今日会ったばかりだし、なにを話していいのかわからない。
彼も黙ったままで、実に気まずい。
「あのっ、先生はどうしてお医者様に?」
一番当たり障りのない質問だと思った。
だけど、彼が一瞬眉をひそめるから、たじろいだ。
それでも……。
「命の重みを知ったから、かな」
彼の言葉を耳にした瞬間、母の最期が頭をよぎった。
目の前で命の灯火が消えてしまったあの瞬間は、一生忘れられない。
だから私も、血が怖くても医療の現場にいたいのだ。
さやかちゃんが亡くなってしまったあと、微かに彼の手が震えていたのは、まぎれもなく『命の重み』を知っている証拠。
「そんなことより、松浦って、今いくつ?」
話をそらされた気がした。
だけど、辛いことのあった今日は、楽しい方がいい。