溺愛ドクターは恋情を止められない

「子供を使って、あなたがそう仕向けたんでしょ?」

「いえ、そんなことはしてません」


そんな卑怯なことはしない。
あんなにかわいい清春君を、自分の私欲のために使ったりなんて、しない。


「あなた、小谷君を彼女から奪ったんでしょ?」

「それは、誤解です!」


酒井先生は、鋭い目で私を睨みつける。


「なにが誤解よ。ドクターを次々と乗り換えるナースはいたけど、まさか事務員にまでいたとはね。とんだ女だわ」


私は首を振って否定した。
だけど、信じてもらえそうにない。


「奏多さんに今後一切近づかないで」


高原先生のことを『奏多さん』と呼んだ彼女は、唇を噛みしめる。

これで高原先生が酒井先生と付き合っていることが、決定的になった。
彼女に罵倒されていることよりも、その事実が辛い。


酒井先生は怒りに震えた様子で、去っていった。
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