溺愛ドクターは恋情を止められない
中庭にポツンと取り残された私は、ただ茫然と立ち尽くしていた。
辛すぎて、泣くことすら忘れて。
私、ここからいなくなった方がいいのか、な?
真っ赤に染まる空を見上げると、高原先生の優しい笑顔が頭に浮かぶ。
「先生。どうしたらいいの?」
彼が教えてくれた赤い光は私のところまで届いているのに、私の気持ちは、青い光のように決して届くことがない。
最初から、叶わない恋だとわかっていたのに、なんの覚悟もできていなかったとはっきり思いしらされた。
習慣というのは、すごい。
どうやって家にたどり着いたのか、良く覚えていない。
それでも気がつくと、部屋の前にいた。
バッグの中から鍵を探して取り出し、部屋に入ると、玄関でそのままヘナヘナと座り込んでしまった。