溺愛ドクターは恋情を止められない
手の上で震えていたスマホはやがて止まった。
着信履歴を確認すると、高原先生から三回も電話が入っている。
ねぇ、先生。
あんなに優しくされると、勘違いするんだよ。
私みたいな、愚かな女は。
なんだか息苦しくなってしまって、窓を開け放つ。
「見えなく、なっちゃった……」
あの時――海岸で先生が手を丸めて望遠鏡を作った時のように――両手を合わせて覗いてみたけれど、涙でにじんでなにも見えない。
「大好きでした」
もう二度と口にできないセリフを空に向かってつぶやいた。