溺愛ドクターは恋情を止められない
彼はエレベーターを降りて少し行ったところで、突然歩みを止め、振り返った。
「清春が、次はいつだと盛んに言うんだ」
そっか。それを電話してきていたんだ。
私だって、あの楽しい時間をもう一度持てたら……と思う。だけど……。
「ごめんなさい。私は、もう……」
その言葉を口にするのがどれだけ辛かったか。
彼は私をじっと見つめたままなにも言わない。
「酒井先生を、誘ってください」
視線をそらしてそう口にすると、いたたまれなくなって足を前に進める。
高原先生の横を通り過ぎると、フワンと彼の匂いがして、余計に辛くなった。
「松浦」
それでも彼は私の腕をつかんで止める。
「離して、ください」
冷静に声を絞り出しながら必死に涙をこらえる。