溺愛ドクターは恋情を止められない
その日の日勤帯最後の患者は、交通事故で入った小学生だった。
丁度清春君と同じくらいの背丈の彼は、一年生らしい。
自転車に乗っていて左折したダンプのタイヤに巻き込まれ、素人の目からも、重症だとわかった。
「ヘルメットは?」
「残念ながら被っていなかったようです」
救急隊員と言葉を交わす高原先生は、眉間にシワを寄せる。
ヘルメットがあるだけで随分違うのに。
「松浦、師長に脳外コールしてもらって」
処置室にIDを届けると、高原先生から指示が飛ぶ。
「はい」
処置室の床には、ポタポタと零れ落ちる血液で血だまりができていた。
少し前なら、それで震えていたけれど、今は違う。
先生達の懸命の治療を少しでも手伝うには、怖がっていないで、できることをこなすしかない。