溺愛ドクターは恋情を止められない
「輸血の準備」
処置室を出ようとすると、高原先生の指示が聞こえて、胸が痛む。
お願い。助かって!
師長にドクターコールを依頼すると、すぐに脳外の先生が走り込んできた。
「頭蓋骨骨折だな」
「はい。意識レベルが低下してきました。一刻を争います」
処置室から聞こえてくるふたりのやり取りは、ますます緊張を高ぶらせる。
「CTの準備は」
「できています」
ナースの声が聞こえると、「行くぞ」という高原先生の声を最後に、処置室から人の気配が消えた。
「緊急オペになりそうね」
内科系の手伝いをしていたナースが、ボソリとつぶやく。
清春君の顔が何度も何度も頭に浮かぶ私は、心の中で神様に何度もお願いをした。
しばらくして、高原先生が帰ってきた。