溺愛ドクターは恋情を止められない
さっき母親が駆けつけて、ナースが付き添ってオペ室に行ったばかり。
「お疲れ様です」
あの子は?
すがるように彼の顔を見つめると、「あとは脳外の先生にお任せした。助かることを祈っている」と顔をゆがめる。
もう引継ぎが終わっていたけれど、そのまま帰る気になれず、オペ室のある地下に向かっていた。
ひんやりとした空気の中、母親の泣き声だけが響いている。
隣にはあれから駆けつけてきた父親の姿。
部外者の私がオペ室の前まで行くわけにはいかず、エレベーターホールを挟んで反対側にあるボイラー室の前に立ちつくしていた。
自販機があるおかげで、両親からは私の姿は見えないはず。
それから一時間。
まだオペは終わらない。
そして私は、どうしても帰ることができないでいた。