溺愛ドクターは恋情を止められない
電話で名前を確認した後、急いでIDを作り始める。
その間にも、ナースたちはテキパキ動き、高原先生の指示通り準備を進めている。
別の患者の診察が終った酒井先生も診察室から出てきて、高原先生と話している。
「えっ、そうなの?」
「あぁ、とにかく診てみないとわからない。隅々までチェックして」
小声で交わされるその会話の意味がわかったのは、そのあとすぐのことだった。
やがて救急車のサイレンが近づいてきて、ピタッと止まる。
この瞬間は、何度聞いてもイヤなもの。
ナースと先生が、入り口に迎えに走った。
それからすぐに、ストレッチャーに乗せられて受付の前を通り過ぎたのは、真っ青な顔をした男の子。
「ご家族はこちらでお待ちください」