溺愛ドクターは恋情を止められない
「ちょっとごめん」
小谷先生はスマホを持って、外へ出ていく。
病院からだろうか。
すぐに帰ってきた彼は「ごめん。病院に戻らないと」と私に告げた。
しかも、その内容が……。
「あの子の父親が乗り込んできて、あの子を出せとナースに要求しているらしい」
「まさか……」
まだ手つかずの料理もあったけれど、私達はレストランを飛び出した。
「松浦は駅に送るよ」
「いえ、私も行きます」
駅に行くと遠回りになる。
それに、気になって帰れない。
「わかった」
小谷先生はいつになく鋭い目をしてハンドルを握った。
「乗り込んでって……」
「あぁ、病棟主任が話をしているようだけど、興奮しているって。あの子は児相から治療のために一時預かりしている状態だから、絶対に渡せない」
「はい」
それから私達はなにも話さなかった。
ただ、あの子の無事を祈るだけ。