溺愛ドクターは恋情を止められない
それぞれの優しさ
整形病棟に駆け込むと、男の人の大きな声がこだましている。
「なんとおっしゃっても渡せません。他の患者さんに迷惑ですから、お引き取りください」
この声は……高原先生。
ここは整形外科病棟だけど、騒ぎを聞きつけてきたのかもしれない。
先生の後ろには警備員の姿もあったけれど、患者の父親だからか、先生が対処している。
父親の肩越しに私達の姿を見つけた高原先生が、なにやら目配せしてサインを送ってくる。
小谷先生はその様子を見て、なにかひらめいたようだ。
「松浦、手伝ってくれる?」
「もちろんです」
元来た階段を駆け下りはじめた小谷先生に続いて、私も走った。