溺愛ドクターは恋情を止められない
「あの……」
「あの子は、廊下を曲がったところの病室にいる。別の階段から上って、外科病棟に移す」
小谷先生に小さくうなずくと、彼も力強くうなずいくれた。
きっとふたりに任せておけば大丈夫。
そう信じて、先を急いだ。
病室には、ナースが付き添っていた。
だけど、ここまで父親の声が聞こえてくる。
「外科に移すから」
「はい」
こっそりストレッチャーを運び入れ、男の子を移そうとすると、布団の下から顔を出したその子は、目を真っ赤にしていた。
「大丈夫。君のことは絶対に守るからね」
小谷先生が優しく話しかけるけれど、彼は表情を硬くしたまま。
この怯えた様子。
もしかして虐待は父親も加担していたのかもしれない。