溺愛ドクターは恋情を止められない
「お父さん、どうなるの?」
「それも心配いらないよ。今はちょっとイライラしてるけど、ちゃんとお話しするからね」
その瞬間、つぶらな瞳からポロポロ涙がこぼれ出した。
「ダメだよ。先生叩かれちゃう」
その場にいた私を含めた三人が、ハッとして顔を見合わせる。
この子は、ずっとそんな思いを抱えて生きてきたんだ。
「君はなにも心配いらない。先生に任せておいて」
小谷先生が頼もしく見える。
どうしてもこの子を守らなければ。
「行くぞ」
ナースと私に目配せした先生は、そっとドアを開け廊下に出た。
ドア一枚開けるだけで、格段に父親の声が大きく聞こえて、背筋が凍る。
裏手にあるエレベーターに音を立てない様にゆっくりと進んでいると、「どこだ」という声が近づいてきて、鼓動が速くなる。