溺愛ドクターは恋情を止められない
『サンキュ。それじゃあ、行ってくる』
切れたスマホを握りしめ、窓から真っ赤に染まる西の空を見上げる。
今、高原先生のパワーは、私に届いている。
頑張らなきゃ。
頑張って恐怖を克服して、再び先生達の役に立ちたい。
母の吐血を見てから血が怖くなった私が、徐々に血を克服してきたように、ゆっくりかもしれないけれど、必ず恐怖を払拭してみせる。
高原先生の声を聞いたおかげか、心が穏やかになったのを感じる。
あまり食欲がなかったけれど、家にあったもので簡単に食事を済ませると、再びベッドに入り、入院中、彼が貸してくれた、私の持っているものの三倍は厚い星の図鑑を眺める。
「こぎつね座なんてあるんだ。見てみたいな」
知らない星座だらけで、すぐに引き込まれる。
他に「はえ座」や「けんびきょう座」なんていう変わった名前の星座もある。