溺愛ドクターは恋情を止められない
「まだ小さかった彼女に悪気はなかったと思う。だけど、どうしても記憶から追い出せない。シャツの襟もとから見えてしまったオペの傷跡を見た彼女が『気持ち悪い』とつぶやいたこと」
そんな……。
「まだ幼かった俺には、どうしても笑って流せなくて……」
彼の顔が苦痛にゆがむ。
どれだけ辛かっただろう。
必死に辛い治療に耐え、やっとのことで自由に空気を吸えるようになって……それなのに、周囲の目は彼に優しいものだけではない。
それは、いじめられているという清春君も同じ。
酒井先生は、その時感じたことをストレートに口にしてしまっただけかもしれない。
それでも彼には、強烈な一言だったに違いない。
「当たり前です」
「都……」
「そんなの、当たり前」
笑って許せなくたって、悪いのは彼じゃない。