溺愛ドクターは恋情を止められない

「無理、するな」

「どうして? この傷は、奏多さんが戦った証なの。この傷がなければ、あなたに出会えなかった……」


きっと、オペをしなければ、今彼はここに存在しないのだろう。
だからこの傷は、戦った証。

私がそう言うと、彼はゆっくり手を離した。


傷に沿って指を滑らせると、トクトクと規則正しい鼓動がダイレクトに伝わってくる。


「いくつか心臓疾患を持っていて、何度もオペを繰り返した。メスを入れるたびに癒着するから、どんどんオペは難しくなって、どこもオペを引き受けてくれなくなった」


それで小柴部長にたどり着いたんだ。


「当時は傷をきれいにするという技術も重視されていなかったし、命さえ助かればと……」
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