溺愛ドクターは恋情を止められない
今は違う。
彼が私の額の傷をできるだけ細かく縫ってくれたように、きれいに治すということも考えられている。
そのための薬剤や医療材料も多い。
だけど、きっとその頃は、病気さえ治ればいいという感覚だったのだろう。
「なにも恥じないで。あなたはここに生きている。それがすべて」
「……都」
彼は私を強く抱きしめる。
彼の止まったままだった心の時計は、動き始めただろうか。
「ありがとう、都」
彼は私を抱き寄せたまま、体を震わせる。
もしかしたら、泣いているのかも、しれない。
だけど今は泣かせてあげたい。
ずっとひとりで抱えてきた辛い思いを、昇華させてあげたい。
気がつけば、彼の腕に包まれ、私も泣いていた。
傷だらけの彼の体は、温かかった。
傷を背負ったからこそ、彼はこんなに繊細で、壊れそうな心を持っているのかもしれない。