溺愛ドクターは恋情を止められない
でも、悪いことじゃない。
だからこそ彼は、患者に慕われ、最後の最後まで力を抜くことがないのだから。
「都」
再び彼に『都』と呼ばれる日が来るなんて。
「俺……今まで臆病だった。都のことが愛おしくてたまらないのに、どうしても捨てられないものがあった。でも……」
彼は一層私を強く抱き寄せる。
骨が砕けそうなくらいに。
「都が殴られて意識を失ったとき、都以上に大切なものなんてないんだと、ようやく気がついた」
彼は手の力を緩め、私を真っ直ぐに見つめる。
私もまた、彼の透き通った瞳に吸い寄せられ、絡まる視線を解くことができない。
「もしも命を懸けて天の川を渡るとしたら、都に会いに行くときだけ」
「奏多さん……」