溺愛ドクターは恋情を止められない
「あの子、無事に退院したよ。きちんと保護されている。心配いらない」
「よかった」
「うん。松浦のおかげだ」
「いえ……」
小谷先生は満面の笑みを見せながら、私の肩をポンと叩いて、処置室に入っていった。
救急の忙しさは相変わらずだった。
「呼吸停止、ひとり入ります。受付の人、電話変わって」
内科系の先生から電話を代わり、IDを作りはじめる。
「交通事故も入ります」
今度は外科系の依頼。
ほぼ同時に二台の救急車が入ると、一気に殺伐とした雰囲気にのみ込まれた。
「松浦さん、無理しないようにね」
「はい。ありがとうございます」
師長が掛けてくれた優しい言葉に、泣きそうになる。
皆忙しいのに。
久しぶりだからか、体力が落ちているからか、フラフラになりながらなんとか業務を終え引継ぎをしていると、珍しい人がやって来た。