溺愛ドクターは恋情を止められない
「あら、院長。どうされたんですか?」
師長が引継ぎの手を止め、受付の入口までやって来る。
「いや、たまにはね。忙しかったですか?」
「はい。でも今年の研修医の先生が皆優秀なので、助かります」
師長の言葉に、院長は大きくうなずいた。
「松浦君は……」
私?
突然院長から私の名前が出て驚く。
院長には、ここに就職した時にお目にかかったくらいで、なんの接点もない。
まだ四十代の呼吸器内科のドクターだという知識しかなかった。
「私、ですが」
私も引継ぎの手を止め、立ち上がると、院長は優しい顔で微笑んだ。
「ごめん。仕事が終わったらちょっと残ってほしい。院長室に来てくれる?」
「はい」
と言ったものの、途端に心臓がドクドクと言い始める。