溺愛ドクターは恋情を止められない
院長が私を呼ぶなんて、どういうこと?
あの子をかばったことに関係があるのか、それとも……。
加賀さんや中川さんが不思議そうな目で私を見つめる。
「すみません。続けてください」
それでも、私もなんのことかさっぱりわからず、なにも言えなかった。
院長室に行くのは初めてだった。
医局の奥にある院長室は、想像していたより寂しい場所にある。
だけど、現場が好きな院長は、あまりこの部屋にはいないと聞いたこともある。
――トントン
大きく深呼吸してからドアをノックすると「はい」とすぐに返事があった。
「松浦です」
「どうぞ」
意を決してドアを開けると……院長の前に立っている、高原先生の姿を見つけ、目を見開いた。
「突然呼び出してすまないね。驚いただろう?」
私の緊張とは裏腹に、院長はとても穏やかな顔をしている。