溺愛ドクターは恋情を止められない
「二年間、地方の診療所にって。内科業務ばかりだろうって……」
「そっ、か」
彼は大きな溜息をついた。
「二年っていうのは、院長の温情だろうな」
「はい。多分……」
「二年あれば、酒井の傷が癒えると踏んでいるんだろう。院長、すごくいい人なんだ。あの人、自分が大恋愛して奥さんと結ばれたもんだから、人の恋路は全面的に応援してくれるんだよ。面白い人だろう?」
面白おかしく話しているのに、彼の顔は笑ってはいない。
「で、松浦は、自分のせいだと思ってるわけだ」
我慢していた涙が、コーヒーの缶にポタリと零れた。
「松浦、冷静に考えろ。もしお前が身を引いたら、高原は酒井と一緒になると思うか?」
それは……。
「あいつはそんなヤツじゃないだろう? ほら、俺とは違うし」
小谷先生は自嘲気味に笑う。