溺愛ドクターは恋情を止められない

「酒井先生に、お願いがあります」

「なに言ってるの。あなたを入れた覚えはないわ。帰ってちょうだい」


冷たい声。
だけど、こんなことでひるんだりしない。


「帰りません。お願いです。高原先生が、メスを握れなくなるのだけは、許してください」

「ふざけないで。あなた、なにをしたか、わかってるの!?」


聞いたことがないような酒井先生の大きな声は、廊下に響き渡った。


「お願いです。高原先生は小柴先生を心から尊敬し、日々努力されてきました。それなのに、メスが握れなくなったら……」

「そんなこと、聞かなくたって知ってるわよ!」


酒井先生が怒りに震えながらドアを閉めようとして……。


「痛っ」


閉まるドアにとっさに手を伸ばすと、指が挟まれてしまった。

激しい痛みに顔がゆがむ。
それでも、この手は離せない。
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