溺愛ドクターは恋情を止められない

「ちょっと、あなた、なにしてるの!」


血が、ポタポタと床にこぼれる。
それでも、もう一度開いたドアの前で、床に正座し……。


「お願いです。高原先生の未来を奪わないでください」


深く頭を下げると、酒井先生の足が視界に入った。


「それなら、別れなさいよ」


血の流れる左手が熱い。
ドクンドクンと心臓が打つたびに、じわじわと血が滲み出ていく。

ずっとこの血が怖かった。
でも、今、もっと怖いのは……奏多さんと別れること。


「それは、できません」

「ふざけないで!」


一歩近づいてきた彼女に、胸倉をつかまれ……殴られると思った瞬間、力を抜き目を閉じた。


「酒井。お前の負けだ」


突然小谷先生の声がして、目を開けると、彼が酒井先生の振り上げた手を制している。
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