溺愛ドクターは恋情を止められない

「小谷君、あなたには関係ない。だいたいあなただって、この子に裏切られたんでしょ?」

「裏切られてなんてないぞ。俺が一方的に好きだっただけ。お前と同じだ」


酒井先生は手を離し、私を解放した。


「同じじゃないわ」

「同じだよ。酒井はわかっていたはずだ。高原がどうしてお前との交際を承諾したのかを」


小谷先生は私の隣にしゃがみ込み、取り出したハンカチで、出血している左手を強く縛ってくれる。


「松浦が脳震盪を起こしたのは、聞いてるな」

「えぇ、まぁ……」

「セカンドインパクトシンドロームをもちろん知っているな。今、酒井がその手を振り下ろしたら、その可能性があったわけだ」


セカンドインパクトシンドローム。
脳震盪を起こしたあと短期間のうちに、もう一度脳に衝撃が加わると命に係わると、何度も聞かされた。
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