溺愛ドクターは恋情を止められない
叩かれる場所が悪ければ、その可能性があったことは、承知の上だった。
「高原は彼女に、セカンドインパクトシンドロームについて、しつこいほど話をしているんだぞ。つまり……」
立ち上がった小谷先生は、苦しげな顔をして酒井先生を見つめる。
「松浦は、命を懸けてでも高原を守るつもりだったということだ。酒井にそんなことができるか?」
「そんなの、大げさよ……」
酒井先生の目が泳ぐ。
「セカンドインパクトシンドロームの致死率は」
「……五十パーセント、以上」
小谷先生の質問に渋々答えた酒井先生の声が、徐々に小さくなる。
「松浦はそれも知っている」
酒井先生は小谷先生を前にして、項垂れてしまった。
「俺達は医者だ。命を救う、医者。たとえなにがあろうとも、それだけは忘れてはいけない」