溺愛ドクターは恋情を止められない

「ごめんなさい」


消毒の匂いが、体にまとわりつく。
だけど、この匂いにも、もう慣れた。


「院長が言ってただろ? 『運命というものからは、逃れられない』って。都は、俺の運命の人なんだ。だから、そばにいてくれるだけでいい。そのために受け入れなければならない運命なら、なんでも受け入れるよ」

「でも……」


それではあまりに代償が大きすぎる。
彼の人生が大きく狂ってしまうのだから。


「ただ、院長はひとつだけ間違ってる。運命は自分で切り開くこともできるんだ。だから、心配するな」

「はい」


彼があまりに穏やかだからか、気持ちがストンと落ち着いてきた。

二年というのは、彼には長すぎるほどの時間だろう。
その間に積めるはずの経験を放り出さなくてはならないのだから。

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