溺愛ドクターは恋情を止められない

その夜。
少し遅くなると奏多さんからメールをもらった私は、一足先に家に帰った。


私の部屋に来てくれると言っていたから、一応食事も用意した。
酔っていたとはいえ、約束、だったから。


さわらの西京焼と五目煮。そしてアサリの味噌汁。
冷奴にはオクラと明太子を乗せて。

いつもコンビニ弁当だと言っていた彼に、野菜の多めの食事を用意した。
左手が使えなくて苦労したけれど、なんとかうまくできたはず。


だけど、急変した患者がいたのか、なかなか彼は帰ってこない。
時計が二十時を指そうとする頃、ようやく玄関のチャイムが鳴った。


「遅くなって、ごめん」

「いえ。おかえりなさい」


玄関で「おかえりなさい」と言うのはちょっと照れくさい。
それでも彼は「ただいま」と微笑んでくれた。
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