溺愛ドクターは恋情を止められない
「あれ、もしかして飯作ってくれた? いい匂いがする」
「はい。お口に合うかどうか……」
「いや、昼飯食べ損ねたんだ。うれしいな」
白衣を脱いだ彼は、途端に身近な存在に感じる。
料理を小さなテーブルに並べていると、「都が作ったのか?」と驚いている。
「はい。ひとり暮らしも長いですし」
「これからはふたりだけどね」
「はい」
奏多さんも自分で言っておいて照れくさいのか、少し俯いて「フッ」と笑う。
「いただきます」
彼は本当にお腹が空いていたようで、「うまい!」を連発しながらドンドン食べ進む。
その様子を見ているだけで、幸せだった。
「都。早く食わないと、俺が全部食っちまうぞ」
「いいですよ」
「ダメだ。食え」
彼はそう言うと、五目煮のレンコンを箸でつまみ、私に差し出す。