溺愛ドクターは恋情を止められない
「ほら、口開けて」
恥ずかしかったけれど、少しだけ口を開けると、彼はそれを差しこんだ。
「おいし」
「だろ? 俺が作ったわけじゃないけど」
奏多さんがいると、こんなにも楽しい。
母を失ってから温度を失くした部屋に、温もりが戻ってきた。
「ふたりだと、楽しいことは倍増するって、知ってた?」
「倍増?」
「いや、三倍かも」
西京焼があっという間になくなった。
「そうかもしれないですね」
だって、こんなに幸せだから。
「でも悲しみは半減する」
彼は箸を止め、私を真っ直ぐに見つめる。
「都の悲しみは、俺が半分引き受ける。でも、俺の悲しみは都が半分引き受けて? そうやって、ふたりで生きていこう」
それはまるでプロポーズの様だった。
「……はい」
なにがあっても、この人とは別れられない。
きっとそれが運命だから。