溺愛ドクターは恋情を止められない
不思議に思い首を傾げると、「心配な患者がいてね」と私のグラスに、カクテルを注ぎ始めた。
「先生、私もジュースで」
別にお酒が大好き、という訳ではない。
「いいから、松浦は飲め。酒に溺れるのはよくない。だけど、時々頼るのは悪くないんじゃないか?」
たしかに、ちょっと酔いたい気分。
酔ったところでなにが変わるという訳ではない。
だけど、鋭くなりすぎている感情を和らげたい。
「ありがとうございます」
先生の好意をありがたく受け取ることにした。
「リラックスして。俺もダラッとさせてもらうから」
先生は深くソファに座り、足を組んだ。
まるでモデルのような長い足は、一日中立ちっぱなしで疲れているに違いない。
「はい」
とはいえ、初めて来た家でリラックスするのは難しい。
だけど、お言葉に甘えてグラスを手にすると、彼が「お疲れ」とグラスを合わせた。