溺愛ドクターは恋情を止められない
思わず彼に飛びついた。
本当に、よかった。
これで彼の夢も途切れることはない。
「小谷が酒井を説得してくれたみたいだな。都が必死だから仕方ないってさ」
彼の首に手を回して抱きつき、うれしい涙を隠すと、彼は「泣き虫だな」とクスクス笑う。
「ありがとう、都。都のおかげ」
声が出せなくて首を振ると、強く抱きしめ返してくれる。
「都。アメリカ行きが決まったら、一緒に来てほしい」
彼の言葉は、胸が苦しいほど幸せだった。
だけど……。
「私、待ってたらダメですか?」
「えっ……」
彼は腕の力を緩めると、険しい顔で私を見つめる。
「日本で、奏多さんの帰りを」
「どうして? 海外が不安なのか?」
本来なら、身寄りのない私がついていくことをためらう理由なんてない。
英語はできないけれど、努力すればなんとでもなる。でも……。