溺愛ドクターは恋情を止められない
次の日。呼び出しもなく一晩中一緒に過ごした彼と、一緒に出勤した。
今日の救急担当は、酒井先生。
始業時間より早めに、病棟と外来棟を結ぶ廊下に向かった。
しばらくそこで待っていると……。
「おはようございます」
「おはよう」
酒井先生がやって来た。
「ありがとうございました」
他に言葉はいらないと思った。
ただ感謝の気持ちをその一言に込め、頭を深く下げる。
「別に……」
そのまま行ってしまうかと思いきや、彼女は私の前で足を止めた。
「小谷君に叱られたわ。失った恋にしがみつくなんて、いい女がスタるって」
彼女の発言に驚き顔を上げると、その瞳からは怒りを感じない。
「本当はわかっていたの。奏多さんの心の中に私なんていないこと。だってあの人、デートにすら一度たりとも誘ってくれなかったもの」
そう、なの?