溺愛ドクターは恋情を止められない
すると彼は、自分のTシャツを脱ぎ捨て、私の手を彼の心臓の辺りに誘導した。
「心配しないで。俺もとびきり脈が速い」
それを聞いて、なんだか泣きそうになる。
彼の心臓は動いている。
だからこうして、触れ合える。
「都と一緒にいると、胸が苦しくてたまらない」
さっきまでふざけていたくせに、少し苦しげな顔をする。
「奏多、さん……」
「都が治して」
再び覆いかぶさって来た彼は、唇と唇が触れそうな距離で動きを止める。
てっきりキスされると思ったのに。
「都が、俺の人生を肯定してくれたから、頑張れるんだよ」
彼の声が優しくて、胸が震える。
「奏多さん……好きです」
伸び上がってキスを求めると、彼は甘い溜息を漏らした。
ゆっくり離れて行く彼の胸に手を伸ばし、傷跡に触れる。
切なげな顔をしてそれでも微笑む彼は、私の手を握って離さない。