溺愛ドクターは恋情を止められない
奏多さんの野上総合への復帰も、決まっている。
そして、彼の帰国に合わせて、広い部屋に引っ越しを済ませてあった。
野上から遠くなく、ふたりで暮らすのに必要な広さ。
彼は帰ってこられないからと、私に部屋選びを任せてくれたけれど、気に入ってくれるといいな。
最寄駅からタクシーに乗り、運転手に部屋の住所を言おうとすると、彼はそれを遮った。
そして、「先に行くところがある」と、区役所に行くように告げている。
すぐに職場復帰するようだから、なにか書類がいるものだとばかり思っていたけれど……。
区役所に到着すると、順番待ちの列の一番後ろにふたりで並ぶ。
長く離れていたから、こうしているだけで幸せ。
「なにをもらうんですか?」
「もらわないよ。出すんだ」
そう言いながら、彼がジャケットの内ポケットから取り出したのは……婚姻届。