溺愛ドクターは恋情を止められない
「ご結婚ですね。おめでとうございます」
係の人の祝福を、ふたりで照れながら聞ける幸せ。
たった紙一枚のことだけど、とても重みがあった。
病院に提出する書類も必要だと、一緒に戸籍謄本も取ると、彼と同じ戸籍に私の名前が載っていて、じわじわと妻になったという実感がわいてくる。
「高原都さん」
「はい」
「これからしばらくは、俺の扶養家族な」
『家族』という言葉に、目頭が熱くなる。
彼とこれからも未来を築いていけるのだと。
でも、『扶養家族』って……。
看護学校に入ってから、医療事務の資格と経験を生かして、時々レセプト作成のバイトはしていた。
だけど、学業も実習も忙しく、貯金を切り崩して生活する日々。
覚悟の上だったけれど、奏多さんはそれまで住んでいた部屋に私を住まわせてくれるという形で、家賃の面倒までみてくれた。